◆ 月明かりの下で ◆

(フォトショップ使用)
おぼつかない文体で小説もどきのようなポエムの延長のような駄文を書きました。
その文章で、イラストをつけてみた。ボーイズラブなのでご注意を。
でも、かなりソフトですよ。エロなし。チュウ有り。
読んでみたい方はそのままスクロール。読みたくない方はこちらから一気に一番下へ→読まない
ちなみにこのイラストタイトルは水月氏が考えたのを使用。


手を伸ばせばすぐそこに君の寝顔。
閉じられた瞼は微かに震え、睫毛はうっすらと涙で濡れて。
少し開いた口からは小さな息が洩れている。
外の世界はまだ月が支配していて
カーテン越しに月明かりが射し込む。
全てが無になったかのような気配。
ここ以外の存在が急にあやふやになったような錯覚。
意識し始めたと同時に高鳴る鼓動。
この不安定さ…


「―――どうかした?」


突然の問い掛けに強張る身体。
思考は急激に浮上し陸へと降り立った。


「…ごめん、起こした…?」
背中に伝った汗を悟られぬようゆっくりと聞いた。
ちらりと顔を覗き見るとこちらに真っ直ぐに向けられた顔。
何かを見透かされそうで、つい顔を背ける自分。
月明かりが全てを映し出してしまいそうで…。
神聖な光の前では万物が逆らえない。


目を閉じる。
それにつづく沈黙―――湧き上がる不安。
何に対する不安なのか。漠然とした、掴みどころの無いもの。
澄んだ空気の中で、自分にだけ纏わりつくねっとりとした空気のような。
こんなにも自分を脆弱にさせるもの。
いつか押し潰されてしまう予感。
わからないもの。


再び降下しようとする意識を引き戻したのは彼の触れるだけの口付け。
わずかに余韻を残したまま、離れる唇を目で追った。
離れるほどに暗さを増し、
また暗闇へと溶け込む。


窓から射し込む月明かりを背に受け、逆光で見えない彼の顔を、ただじっと。
見つめながら零れたその雫。その一粒に、さっきの答えが詰まっていた。


いつのまにか大きくなった存在。
無くしたくはないという怯え。
なのに無くしたときの事を考えてしまう自分。
自己防衛なのだろう。
少しでもショックを減らしたくて、
僕は小さな死を繰り返す。


だけど、予想を遥かに上回る思いが
僕を待っている事であろう。


君にはわからない。
わからせない。
無邪気な君はいつも、
眩しいくらいの存在で。
そんな君にこの想いは重すぎて。


…こんなに苦しむのならいっそのこと壊してしまおうか…
破壊的な衝動がよぎる。


彼の指が頬に触れる。
そっと涙を拭って…
「…月を吸い込んだみたいだ」
そう言って指を舐めた仕草にじっと見惚れていた。


「―――怖い夢でもみた…?」


怖い夢をみてしまうかもしれない事が怖くて。
でもそんな事は言えなくて。
ただ…頷いた。


僕は少しだけ口元を上げて、
「大丈夫…」
と小さな声で。


クシャ、っと髪を撫でる手が優しくて。
何かが落ちた気がした。
完全ではないけれど。


窓の外を見上げると、
雲のかからない白い月。
そこから注がれる光を意識して、
そっと目を閉じた。


―――クシャ、
今度は前髪を手で掬われて。
じっ、と僕を見つめる瞳と、
ぶつかった僕の目。
そのまま無言で、
ただ目だけは逸れる事もなく、
互いの想いを読み取ろうとするように。


―――僕の目には何が映っているだろう?


触りたいと思った。
思うよりも先に手が動いた。
けれど壊してしまいそうで、
触れる直前に手が竦む。


守りたいと思う心と、
壊してしまいたいと潜む衝動。


触れたい…
貴方に…
触れたい…
君に…


胸が痛い…
締め付けられる感情、
抑えつける衝動。
―――先に目を逸らしたのは僕だった。


太陽のように無邪気な君と
僕を惑わせる月のような貴方。
どちらも僕には眩しすぎて、
堕ちていく自分。


貴方の前に止まった手に
貴方の手が重なる。
そのまま引き寄せられて、
預けられる頬。


「―――どうして躊躇うの?」


それに対する言葉は無くて。
じっとりと熱をもつ掌で
彼の頬の冷たさをぼんやりと意識していた。


愛してる…


そんな言葉が今更必要なわけではなかった。
この想いを言葉で伝えるにはあまりにも手段が薄弱で…


彼の顔が見えるように、
そっと身体を動かす。
月明かりに半分照らされた貴方の顔、
青白く透きとおって、
まるでその身体の中に赤い血液が流れている事など、
とても感じさせないような…
月の…
月の支配…
綺麗で息が詰まる。


親指でそっと彼の唇に触れる。
そこだけ僅かに熱を持っているように色づき、
僕の胸を燻るには充分だった。


上唇と下唇をなぞって、
爪を立てて少し口を開かせる。
チラリ、っと見えた舌に情欲を煽られ、
一瞬の眩暈。



そのまま月の支配に従順した。